えのもと小児科設立の理念
“こどもの頃の記憶”と言われて、みなさんは何を思い起こしますか。
家族で行った特別な場所、友だちと過ごした楽しい時間、ひとりでいる時に経験したちょっと怖い思い出など、きっとたくさんのことが思い出されるでしょう。私(院長)も様々な記憶がめぐりますが、ふしぎと強く思い出されるのは「車の天井」と「えんがわ」です。
幼少期の私は、ちょっと調子が悪くなるとすぐ吐く子でした。熱が出れば吐く、咳がひどくて吐く、頭が痛くなって吐く、と挙げればきりはありません。そんなある日、たしか雨の日だったと思います、いつも通り調子が悪くなって吐きだした私を、これまたいつも通っていたかかりつけの小児科医院へ、母が車で連れて行ってくれました。その車中、横になった私は洗面器をかたわらに、ゆらゆらと車の動きに合わせて揺れる天井を眺めていたのを、なぜかよく思い出すのです。
両親が共働きだった私は、まだ小学校に上がる前に、よく祖父母宅へ預けられていました。祖父もまだ仕事をしていたでしょうか。当然、一番の遊び相手は祖母でした。昔ながらのえんがわに座っておもちゃを広げ、家事で忙しいはずの祖母を呼んでは「お店やさんごっこやろう!」と言って座らせたのを思い出します。
なぜこの2つの記憶は鮮明なのか。自分でも理由はわかりませんが、どちらも私を守り育てることに必死だった家族の記憶だからかも知れません。
あれから何十年が過ぎ、自分も3人のこどもの父親となって改めて感じることは「“こどもの健康と幸せ”を願う親のきもちに勝るものはない」という、ありきたりですが永久不変の真理です。
この国に生まれる赤ちゃんの数がついに年間100万人を切ろうか*という、完全な少子高齢化時代となった今、こどもの数が少ないからこそ“こどもの健康”に寄せられる関心と期待は以前にも増して大きくなっています。家族のかたちも大きく変わりました。核家族が増え、こどものちょっとした変化でも相談する相手を探すのに苦労します。心配なのに分からない、分からないから心配…多くのお母さんお父さんが経験することでしょう。
*厚生労働省:平成26年(2014) 人口動態統計の年間推計(H27.1.1)より